コラム

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慢性リンパ性白血病

2017年02月11日(土)

カテゴリ:腫瘍科

「白血病」はヒトの病気で耳にすることが多いと思います。白血病は血液中にいる白血球のがんであり、イヌにおいても発生します。しかしながら、ヒトほど多く発生しません。白血病は、がん化する白血球のタイプ(リンパ球、骨髄球)と進行の様子(急性、慢性)により、更に分類されます。慢性リンパ性白血病(Chronic Lymphocytic Leukemia;以下CLL)は、成熟リンパ球様細胞の腫瘍性増殖により発生します。犬において中高齢に見られる病気です。症状は、食欲低下、体重減少、元気消失、間欠的な嘔吐や下痢が見られることがありますが、ゆっくりと進行し、症状がはっきりしないため、発見が遅れることが多いです。血液検査にてリンパ球数が増えることでCLLの疑いを持ちますが、リンパ球は健康犬においても増加する事(興奮・ワクチン後)もあり、顕著にリンパ球が増えていない症例では、鑑別が難しいです。
  今回の症例は、12才雄の雑種犬で、食欲低下で来院されました。血液検査においてリンパ球の増加(11100/μl)がありました。2週間後の検査ではさらに増加(18900/μl)しました。血液塗抹では小〜中型リンパ球が多数見られました。



体表リンパ節や胸腔・腹腔リンパ節に腫大は認められませんでした。以上からCLLを疑い、骨髄検査・血液のリンパ球クローナリティ解析を計画しました。まず侵襲性の少ない血液のリンパ球クローナリティ解析を実施しました。結果、IgH鎖の単一バンドが検出され、B-cellのモノクローナルな増殖(腫瘍性増殖)が疑われました。



 これ以上の検査は望まれなかったため、これまでの検査結果を総合的に判断し、CLLと仮診断しました。検査結果が出るまでに食欲も戻り全身状態も良くなったため、CLLに対しては経過観察としました。定期的に血液検査においてリンパ球数を測定し、症状の悪化が見られれば治療開始するようにしています。現在、リンパ球数は18000〜19000/μlを推移してますが、元気にしています。
 CLLの診断において骨髄検査は重要な検査の一つですが、侵襲性のある検査でもあるので容易に実施できません。リンパ球クローナリティ解析は低侵襲であり、CLLの診断の検査として有用な検査と考えられました。(北川)

乳腺腫瘍(乳ガン)

2016年10月23日(日)

カテゴリ:腫瘍科

今回は乳腺腫瘍のお話です。犬では未避妊の雌では最も発症率の高い腫瘍です。犬では約半数が悪性、猫では90%以上が悪性と言われています。とくに猫では乳腺に腫瘤が見つかったら、できるだけ早期に摘出を考えるべきです。悪性の乳腺腫瘍は肺などに転移し、命を奪う可能性があります。

ただし、乳腺腫瘍の発症は適切な時期に避妊手術をすることで予防することが可能です。犬では初回発情までに避妊手術をすれば、乳腺腫瘍の発症率は0.05%、一回目の発情後に避妊手術をした場合は8%、二回以上の発情を経験した犬では26%と言われています。このことが、一回目の発情がくる前に避妊手術をすることが勧められる根拠となります。

写真①は当院で乳腺腫瘍の摘出を行った症例です。左の下腹部に大きめの腫瘍があり、他の部分にも小さい腫瘍が認められました(丸印)。一番大きな腫瘤は急激に大きくなってきたものでした。左側の乳腺の摘出と下腹部では両側の乳腺摘出を行いました。写真②は手術直後、写真③は手術2週間後の抜糸時の写真です。



写真④は両側に大きな腫瘍があった症例で、左下腹部の腫瘍は自壊して化膿していました。上腹部の右側乳腺と下腹部の左側乳腺をクロスする形で摘出しました。左右の乳腺を片側ずつ摘出するのが通常の方法となりますが、犬の年齢が高齢だったという事もあり、一度で手術を終わらせるために変則的にこのような摘出を行いました。写真⑤は手術直後の写真です。


このように乳腺腫瘍の摘出では腫瘍だけを取り除くのではなく、周囲の乳腺ごと切除するため、かなり大きな切開になります。当院では、レーザーメスや電気メスよりも組織の熱ダメージの少ない超音波メス(ソノサージ)を使用して乳腺の摘出を行いますので、短時間で、ほとんど出血なく摘出することが可能です。それにより、皮膚の癒合も早く、漿液貯留などもほとんど起こりません。

犬の潜在精巣と精巣腫瘍

2016年10月22日(土)

カテゴリ:腫瘍科

潜在精巣とは、精巣(睾丸)が陰のうまで降りてこず、お腹の中や鼠径(そけい)部に停留してしまう状態をいいます。停留精巣、陰睾とも呼ばれます。
潜在精巣は、犬では腫瘍化する確率が正常の9倍に高まると言われています。そのため、潜在精巣がある場合、去勢手術をすることが強く勧められます。精巣腫瘍の中でも、セルトリ細胞腫というものではエストロゲンというホルモンを産生し、その影響で重度の貧血を引き起こす事があり、その場合、予後不良となります。
潜在精巣は小型犬に時々みられ、猫では非常にまれです。

次の写真は、腹腔内の潜在精巣が腫瘍化していた症例です。正常の数倍に大きくなった精巣がお腹の中から摘出されました。

摘出後、病理検査により『悪性セルトリ細胞腫』と診断されました。この症例では転移や貧血などの徴候は見られませんでした。

以前、他院で腹腔内の潜在精巣の手術を断られたという患者さんが来院されて、当院で手術をしたことがありました。年を取って腫瘍化してから手術をするのと、若いうちに予防的に手術をするのでは麻酔などのリスクも大きく変わってきますので、やはり早めに手術をするべきだと考えられます。

また、潜在精巣は遺伝する可能性があるため、繁殖させるべきではないとされています。そのため、正常に降りてきている方の精巣も通常の去勢手術と同じように摘出を行います。