コラム

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眼瞼内反症と角膜穿孔

2016年10月25日(火)

カテゴリ:眼科

最近の猫ブームで、テレビのCMなどでも猫をよく目にします。中でもスコティッシュフォールドはとても人気があるようです。
今回の症例は、若いスコティッシュフォールドです。まぶた(眼瞼)が内反し、まぶたの毛が眼球にあたって角膜に傷を作ってしまっていました。痛みと炎症でまぶたが腫れてしまったことにより余計に内反が悪化し、さらに角膜の傷に刺激を与えてしまうという悪循環になっていました。
スコティッシュはもともとむくんだような顔をしていますが、その特徴のために、まれにこのようなことが起こります。
この猫では、角膜にかなり大きな潰瘍を作ってしまっていました。さらにその潰瘍の一部が深くなって穴があき、角膜穿孔(かくまくせんこう)という状態になってしまっていました。写真では、目の中央にある大きな潰瘍と、下まぶたの内反が分かります。

角膜に穴があくと、眼房水という目の中の水が漏出し、激しい痛みが生じます。 このような状態では、緊急の手術が必要です。

眼の白目の部分の表面を覆っている結膜という膜を切り、それをたんざく状に伸ばし、角膜の穴を塞ぐように角膜に縫い付けます。これを結膜フラップ手術といいます。今回の症例では、角膜穿孔している穴の周りに大きい潰瘍があったため、結膜フラップも大きめに縫い付けました。

角膜に縫合するためには、PDS 7-0という太さ0.05mmの、ちょっと目を離したら見失ってしまいそうなくらい細い吸収糸を使い、拡大鏡を使って手術を行います。

この手術によって角膜の穴をふさぐと、眼房水の漏出が止まります。
また、角膜には血管がもともと存在しないのですが、結膜には血管が豊富なため、結膜から得た血液の力により角膜の傷の治癒が早まります。

次に、眼瞼内反症の手術を行いました。まぶたの皮膚を三日月型に切開し縫合することでまぶたの内反を整形し、今までよりパッチリと目が開くようにしていきます。
まぶたの巻き込みがなくなり、毛による角膜への刺激がなくなります。 これもまた非常に細かい手術ですが、きれいに手術を行えば、術後の表情や顔つき、目の開閉への影響はほとんどありません。

写真は、手術から4週間後の状態です。

眼の表面に付着しているピンク色の部分が結膜フラップです。 普通の表情では分かりにくいですが、上まぶたをめくると上側の結膜から伸びたフラップが角膜に付着しているのが分かります。また、下まぶたの内反もなくなっているのが分かります。 この後、結膜フラップを角膜に付着している部分の近くで切断する手術を行います。角膜に残った結膜の一部はいずれ退縮して目立たなくなっていきます。

第三の「まぶた」と「チェリーアイ」

2016年10月21日(金)

カテゴリ:眼科

犬や猫には、人間にはない『まぶた』があります。目頭のところに白からピンク色をした膜が隠れています。これを第三眼瞼(がんけん)、または瞬膜(しゅんまく)といいます。
この膜には第三眼瞼腺という涙腺があり、涙の30~50%を産生しています。
この膜がくるっと反転し、目頭の縁に飛び出てきてしまうことがあります。すると、赤く腫れてサクランボのように見えるということから、『チェリーアイ』 という名前で呼ばれています (写真①)。


最初のうちは自然に引っ込んだり、抗炎症剤などの点眼薬で元に戻ることが多いのですが、再発を繰り返すうちに、出っぱなしになってしまうことがあります。 そうなると手術による治療が必要になります。 第三眼瞼腺は涙の30~50%を産生しているため、ここを切り取ってしまうと、ドライアイにより乾性角結膜炎を引き起こす可能性があります。そのため、チェリーアイは切り取らずに治すことが大切です。

当院では、眼球下直筋という眼球の下の微小な筋肉に第三眼瞼腺を縫合する方法によりチェリーアイの整復を行っています。たいてい術後の腫れなどもほとんどなく、きれいに治ります。(写真②・③)は手術後1週間の状態です。

ただ、あまりに長い時間チェリーアイを放置しておくと、第三眼瞼の中にある軟骨が変形し整復が難しくなりますので、チェリーアイを繰り返している場合は、早めに手術を行うことをおすすめします。