コラム

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猫の上腕骨骨折

2016年10月24日(月)

カテゴリ:整形外科

今回の症例は、猫の上腕骨の重度の骨折の症例です。以前にもベランダから落下して骨折した猫のお話を紹介しましたが、今回は家の中で骨折してしまったケースです。おそらく、ゲージの格子の隙間に腕を突っ込み、肘が引っかかった時に大暴れして折れてしまったと予想された症例です。夜間診療所にかかられて、翌朝当院へ来院されました。

レントゲンを見ると、ポキッと二つに折れるような骨折ではなく、骨の中央部が数個の骨片に割れていることが予想されました。(写真①・②)

しかし、手術を始めてみると予想を越えたひどい骨折をしていることが分かりました。レントゲンには映らない亀裂がかなり広範囲に、しかも多数入っていることが分かりました。骨の下半分が7~8個の骨片に割れて、骨の中央部はバラバラ、縦割れした亀裂が肘まで続いていました。まるで陶器のお皿が割れたような状態でした。
骨折を整復するためには、骨と骨を金属のプレートなどを用いてしっかりと固定する必要があるのですが、これでは肘側にはしっかりと固定できるだけの骨の領域がほとんど残っておらず、非常に整復が難しい状態でした。

プレーティングだけでは整復不可能と考え、プレーティングとピンニングを併用する方法を行いました。
骨の中に直径2.4mmのピンを挿入し、その周りにバラバラになった骨片をパズルのように組み合わせて元の形を再現していき、糸で仮止めを行います。これにより大まかな骨の形は再現できましたが、これでは体重を支えることはできません。 次にプレートを用いて骨の上部(近位)と肘を固定し、これにより体重の負荷を支えるようにしました。さらに骨片とプレートを太めのナイロン糸で固定しました。(写真③・④)


とても長時間の手術になりましたが、その後骨は癒合し、術後4か月後にピンを抜く手術を行いました。(写真⑤・⑥)

さらに4か月後にプレートを抜去し、骨は元の形を取り戻すことができました。(写真⑦・⑧)

骨折整復の手術後には安静のためにとても長い入院をすることになってしまったのですが、幸いこの猫は当院のスタッフにもよく慣れてくれて、性格もとても良い猫で、当院のスタッフからもすっかり人気者になっていました。

超小型犬の骨折

2016年10月22日(土)

カテゴリ:整形外科

今回の症例は、体重がたった1.3kgの2才のチワワです。この子が抱えていた問題は前足の骨折(橈尺骨骨折)でした。実は骨折してからすでに一年以上が経過していました。ある動物病院で治療を受けていたにも関わらず、前足はほぼ90°曲がったままになってしまっていました(写真①)。写真②はそのレントゲン写真です。

日本ではトイ・プードルやチワワなどの小型犬が流行し、その中でも特に体の小さい犬が好まれる傾向があるため、日常のちょっとした事で前足を骨折してしまうケースが増えています。特に多いのが、抱っこしていて落としてしまったり、机などの上から落ちてしまうというケースです。 このような超小型犬種の前足の橈尺骨の骨折では、骨が非常に細い上に、骨の癒合反応が乏しく、癒合不全や変形癒合を起こしやすい大きな問題となっています。
さらにこの子の場合はかなりの時間を経過してしまっていたため、骨がくっつこうとする反応が完全に終わってしまっていました。しかも、手首の関節にとても近い部分での骨折であり、この骨折の治療は、非常に難しい状態でした。

このままでは、きちんと歩けないままになってしまうため骨をまっすぐにつけなおす手術を行いました。
骨折してから時間が経ちすぎているため、まず、骨折している部分の骨を少しずつカットして、新しい骨の断面を出しました。遠位(手先)側の骨は長さが5 mm程度しかないので、これを1~2mmだけ削りました。近位側の骨は斜めに骨が萎縮しているため、4~5mm程切りました。次に太さが3mm程度しかない骨の中心を通るように、太さ0.8 mmのピンで骨を固定しました。(写真③・④)

手術後に手先から肘までの外固定(ギプス)をつけ、骨が癒合するまで待ちます。通常は、早ければ1ヶ月くらいで外固定を外し、2ヶ月くらいでピンを抜くのですが、この子の場合、外固定を外すまで半年、ピンを抜くまでに7ヶ月、萎縮した筋肉のリハビリも含めて、全部で1年かかりました。
長い治療の結果、少し骨は短くなりましたが、歩くことも走ることもできるようになりました。

ベランダからの落下事故

2016年10月21日(金)

カテゴリ:整形外科

診察で多くの飼い主さんとお話をしていると、室内飼いの猫をマンションのベランダに出しているという方はよくいらっしゃいます。しかし、猫のベランダ落下事故は決して珍しいことではありません。骨折、下半身麻痺、死亡事故などの大きな事故となります。猫が出たがっても基本的にベランダへは出さないことをおすすめします。

今回の症例は5ヶ月齢の猫、飼い主さんはベランダへは出さないようにされていましたが、猫が隙を付いてベランダに脱走し、そのまま5階のベランダから落下してしまいました。車の交通量の多い道端だったらしいのですが、運良く通行人に抱っこして助けられ、すぐに飼い主さんが当院へ連れてこられました。

鼻出血はありましたが、幸い頭部の打撲は軽度でした。ただ、右腕の上腕骨の骨折をしてしまいました (写真①・②)。


骨折はプレーティング手術により内固定しました (写真③)。金属のプレートをスクリューで止めて骨折部分を固定します。約3ヵ月後、骨が癒合したのをレントゲンで確認し、プレートを抜く手術を行い無事に骨はきれいに治りました (写真④)。今は全く問題なく走り回っています。

ところで、この猫ちゃんは、生後間もない時に死にそうになっているところを、今の飼い主さんに拾われ助けられた子だそうです。若くして2度も死の危険を切り抜けた、ある意味、すごい強運の持ち主かもしれません。